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アレクサンドル・シャボ、コンクールを語る

パリ・オペラ座管弦楽団の首席奏者を務め、パリ地方音楽院、ヴェルサイユ地方音楽院、パリ12区立音楽院で若手奏者の育成を手がけるアレクサンドル・シャボ氏(以下敬称略)。2023年、横須賀で開催される第6回ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクールの審査員を務める予定の同氏に、コンクールについて書面でお話を伺いました。(2023年7月)
 
 

ご自身のコンクール経験について

 
  まずはじめに、シャボさんのコンクール参加者としてのご経験について、教えてください。最も印象に残っているコンクールは?
 
シャボ 2004年に受けたパリ・オペラ座の入団試験です。
 
  入団試験に合格した理由は何だと思いますか。
 
シャボ 既にエキストラ奏者としてオペラ座で数々の公演に参加しており、荘厳な会場、オーケストラピットでの演奏、オーケストラ、他の木管ソリストたちが大好きでした。そこから生まれた「入団試験に合格したい」という強い決意が決定的だったのだと思います。
 
  逆に、コンクールで失敗したことはありますか。どのような失敗をしたか、それをどのように克服したか教えてください。
 
シャボ オペラ座の入団試験の前に、他のコンクールに失敗した経験があります。楽器を十分に上手く演奏できなかったこともあれば、コンクールで期待されることに集中できていなかったこともありました。そこで、審査員がコンクールの候補者に何を期待しているのかを、よりしっかりと理解するよう努めたことが、その後の経験に活かされました。 
 
 

審査員としての視点

 
  コンクール審査員として、候補者のかたがたに期待されていることを教えてください。
 
シャボ 自分の人間性や個性を、音楽を通じて審査員や一般の人々と分かち合おうとしている候補者の演奏が聴きたいと思います。候補者がステージに立つ意欲を持ち、演奏を楽しみながら本番に臨む姿を期待しています。
 
  ハイレベルな国際コンクールでは、審査員は「音楽」を評価すると言われています。コンクールにおける「音楽」と技術の関係を教えてください。
 
シャボ 音楽は、技術的なパラメータがすべて統合され、完成され、楽器が身体と心の自然な延長となったときに表現できるのものです(だからといって、小さなミスが許されないわけではありません!)。
 
  コンクール参加者は楽譜に忠実であることが求められますが、良い意味で個性を発揮できる人とは、どのような人ですか。
 
シャボ 楽譜を尊重しながらも、解釈の余地は十分にあります。俳優が作者の書いた言葉を変えることはないけれど、俳優の演技はみんな違うのと同じです。
 
  モーツァルトの音楽について、時代(例:ランスロの時代と現代)や人(例:同時代の各演奏者)によって解釈が異なるにもかかわらず、それを審査することについて、どのようにお考えですか。
 
シャボ それぞれの時代には、独自の美の規範(音色、素材、アーティキュレーションなど)が存在しますが、時代や流行を超えて、時に古風な解釈も私たちに語りかけてきます。なぜなら、演奏者は楽器の限界を超え、楽譜を熟知し、感性によって私たちの心に直接語りかけることができたからです。異なる時代を比較する必要が本当にあるのでしょうか?我々が異なる解釈を同時に評価できるのは、それぞれが異なる感動を与えてくれるからです。
 
  審査員の意見が一致しない場合、どのようにして結論を出すでしょうか。
 
シャボ 意見の不一致が起こることは非常に稀です。もしそうなったとしても、各コンクールにはルールが設けられており、解決策を用意しています(審査委員長の決定票、第2票など)。
 
  過去に審査した候補者の中で、印象に残った人がいれば、その人がどんな人だったのか、どんな感想を持ったのかを教えてください。
 
シャボ オペラ座では先日、首席クラリネットの入団試験が行われました。試験に合格したハン・キム氏は、モーツァルトとドビュッシーを演奏し、その知性と感性、そして楽器演奏の巧みさにおいて見事な演奏を披露しました。
 
 

コンクールに向けたアドバイス

 
   最後に、これからコンクールに挑む奏者の方のために、アドバイスをお願いします。
 
① 効果的な準備のコツ

 
シャボ コンクールの準備は、人それぞれです。何度かコンクールの準備をすることで、自分に何が必要なのかが分かってきます。他の仕事と並行してかなり前から取り組む人もいれば、数週間前から集中的に取り組む人もいます。大切なのは準備することです!
 
また、例えばジャック・ランスロ国際クラリネットコンクールは、非常に多くの異なる作品を演奏できる素晴らしいプログラムだと思います。しかし、毎日全ての作品の練習に取り組むことはできません。それでも、少なくとも1週間に1度は全ての曲をまとめて通しで演奏し、うまくいかなかったパッセージを練習する必要があります。
 
② 暗譜に不安がある場合の対処方法
 
シャボ 暗譜には人それぞれのコツがあります。私個人は視覚的記憶が強いので、吹く音符の名前を思い浮かべています。
 
③ コンクールや、重要なコンサートで緊張をほぐすための方法
 
シャボ 最良の解決策は、演奏する時に自分が行っていることに集中することです。
本番前に緊張するのは当たり前です。それは我々が本番を重視している証拠ですし、聴いてくださる人へのリスペクトを感じているからです。もし大切な本番の前に、ストレスを感じなくなる日が来たら、それはそれで心配なことです。
そして、この緊張感がプラスに働き、自分のできることを最大限に発揮するためには、自分のレベルや練習に対する自信も必要になってきます。
 
④ 自分の前の番の候補者が極めて優秀だった場合、どのように精神的に備えれば良いか
 
シャボ 一番良いのは、他の候補者のことは考えずに自分自身に集中し、練習通りに演奏することです。
 
⑤ 自分の生徒に対して、準備の仕方についてよくアドバイスしていることは?
 
シャボ できる限りゆっくりとしたテンポで練習し、楽譜に掛かれていることや分析したことに基づいて作品をどう解釈するかを明確にしておくようアドバイスしています。
 
⑥ コンクールに向けて、リードはどのように準備すればよいでしょうか?
 
シャボ コンクールの数週間前にリードを2~3パック開封し、できるだけリードをローテーションで使用すれば、何枚かはコンクールで使用できるようになります。
 
 
  ありがとうございました。
 
 
※ アレクサンドル・シャボ氏の経歴、現在の活動等についてのインタビュー記事はこちらからご覧ください。
 
※ アレクサンドル・シャボ氏が指導するを担当する第33回 ビュッフェ・クランポン・ジャパン欧日音楽講座2023の情報はこちらからご覧ください。
 
※ アレクサンドル・シャボ氏が使用している楽器の紹介ページは以下をご覧ください。
〈ビュッフェ・クランポン〉クラリネット”ディヴィンヌ
〈ビュッフェ・クランポン〉クラリネット”プレスティージュ

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