検索

NEWS

プーランク、クラリネットとピアノのためのソナタ

国際的なクラリネット奏者として多彩な演奏活動を行い、パリ地方音楽院やローザンヌ高等音楽院で教鞭をとるフローラン・エオー氏。エオー氏がフランスで執筆中のブログの日本語版を、シリーズ化してお届けいたします。
 
 
フローラン・エオー氏 ブログ Vol.2
プーランク、クラリネットとピアノのためのソナタ
 

プーランクとコクトー

 
プーランクは生涯を通じて管楽器に傾倒していました。1923年に作曲の師匠であるシャルル・ケシュリンに宛てた手紙では、クラリネットが彼にとって「大のお気に入りの楽器」であることを告げているほどです。
 
フランシス・プーランク(1899-1963)が1962年に書いた、クラリネットとピアノのためのソナタ。この曲は「アルチュール・オネゲルの思い出に」捧げられ、1963年4月10日にニューヨークのカーネギーホールで、ベニー・グッドマンとレナード・バーンスタインによって初演されました。作曲家の死から3ヵ月後のことでした。
 

コクトーによるプーランクの絵

 
フランス初演は、クラリネットのアンドレ・ブタールとピアノのジャック・フェヴリエの2人の偉大なアーティストによって行われました。1963年7月20日、エクサンプロヴァンス音楽祭でのことです。
 
ジャック・フェヴリエ(1900-1979)は、パリ音楽院でマルグリット・ロンに師事しました(1921年に1等賞)。彼はフランシス・プーランクの音楽の偉大な解釈者であり、1932年にプーランクと2台のピアノのための協奏曲を初演しました。録音は主にフランス音楽に特化しています。1963年、ラヴェルの録音でアカデミー・シャルル・クロのレコード大賞を受賞しました。
 

ジャック・フェヴリエとモーリス・ラヴェル

 
アンドレ・ブタール(1924-1998)は、トゥールーズでルイ・カユザックにクラリネットを学び、パリ音楽院でオーギュスト・ペリエのクラスで学びました(1944年第1位)。
アンリ・ドゥルアールと並ぶパリ音楽院管弦楽団の首席クラリネット奏者(1948-1967)、オペラ=コミック座管弦楽団の首席クラリネット奏者(1949-1972)、そしてパリ・オペラ座管弦楽団(1973-1984)を歴任しました。
 
使い込まれたLPの傷はあるものの、1964年の録音(Le Chant du Monde)で、彼の演奏の質、音楽的気質を完璧に感じ取ることができます。
 

プーランク、クラリネットとピアノのためのソナタ – 第一楽章
/ アンドレ・ブタール(クラリネット)、ジャック・フェヴリエ(ピアノ)/ 発売元: Le chant du monde、録音:1964年

 
楽譜はチェスターミュージックから出版されています。この参考録音にあるように、この版には(フランスのクラリネット奏者にはよく知られている)いくつかの誤りがあります。
 
ここでは、Allegro tristamenteに関するものを紹介します。
 
「2 」の1小節前:ミを吹く
 
 

 
「2」の4小節後: ミを吹く
 

 
「3」の4小節後: ド♯を吹く
 

 
プーランクのちょっとした冗談:この楽章は「アレグレット」と記され、非常に速いテンポ(♩=136)で演奏されます。したがって、Allegro tristamenteというタイトルは、文字通りの意味で理解されるべきで、明るく悲しい、あるいは悲しく楽しい演奏をしなければなりません。これはこの楽章の演奏に意味を与えるもので、「深刻さと幻想」の間で揺れ動く自分を表現したプーランクにとてもふさわしいものです。
 

プーランク

 

プーランク、クラリネットとピアノのためのソナタ – 第二楽章
/ アンドレ・ブタール(クラリネット)、ジャック・フェヴリエ(ピアノ)/ 発売元: Le chant du monde、録音:1964年

 
「アルチュールの思い出に捧げるクラリネットとピアノのためのソナタのラメントを完成させているところです。とても感動的だと思います」。プーランク、1959年7月3日、ロカマドゥールにて。
 
第2楽章のロマンツァでは、ジャック・フェヴリエが 「6 」の3小節前の最後で、短調の和音を弾いていることに気付きます。
 

 
「2」の後のブレスについて、ブタールから伝えられているとおり、同じブレスでフレーズを終えるようにという指示に留意してください。
 

 

プーランク、クラリネットとピアノのためのソナタ – 第三楽章
/ アンドレ・ブタール(クラリネット)、ジャック・フェヴリエ(ピアノ)/ 発売元: Le chant du monde、録音:1964年

 
アレグロ・コン・フオーコでは、「4」の1小節前に訂正があり、2つ目の8分音符がファ♭(F♭)になっています。
 

 
「11」の10小節目にスフォルツァンドを追加します。
 

 
「13」の後の4小節目、5小節目も同様にアクセントを追加します。
 

 
ここでは、1959年に作曲されたプーランクの「グローリア」から「ドミネ・デウス、アニュス・デイ」を紹介します。クラリネット・ソナタで使われているテーマや和声に近いものがあることはすぐにわかるでしょう。
 

フランシス・プーランク(1899-1963)《ドミネ・デウス》《アニュス・デイ》《グローリア》、ニューヨーク・フィルハーモニック、ウェストミンスター合唱団、ジュディス・ブレーゲン(ソプラノ)。モーリス・ドゥニ(1870- 1943)の作品とともに。

 
 
フローラン・エオー氏 関連リンク
※ ブログVol.1 「ドビュッシー、クラリネットとピアノのための第一狂詩曲」はこちら
※ ブログ(オリジナル版)はこちら
※ プロフィールページはこちら
※ レッスンを受講できる欧日音楽講座のページはこちら

※ 本記事は、フローラン・エオー氏のご承諾のもと、2010年2月5日に公開されたブログ記事を株式会社 ビュッフェ・クランポン・ジャパンが翻訳したものです。翻訳には最新の注意を払っておりますが、内容の確実性、有用性その他を保証するものではありません。コンテンツ等のご利用により万一何らかの損害が発生したとしても、当社は一切責任を負いません。

Retour en Haut
Your product has been added to the Shopping Cart Go to cart Continue shopping